民藝は大丈夫です。 今回の災難の中で日本民藝館も休館を余儀なくされましたが、6月9日から再開いたします。皆さまには、これまでご不便をおかけし誠に申し訳ございませんでした。 さて、この苦難の経験から我々は多くを学びました。何が大切で何が不要か。これから生活へのアプローチは必ず変わるでしょう。ビジネスよりも、小さくても幸せで、質のいい生活、健康や安心、家族や環境や教育の大切さ、そして美術への関心が高まるにちがいありません。 民藝はもともとその小さな生活の大切さに寄り添って来ましたから、その価値はなおいっそう人々を励ましていくでしょう。民藝館は真に豊かで、小さくとも幸せな価値を共有する人々の心の拠り所です。これからも変わることなく、私たちが大切に思っていることをも守り続けてくれるでしょう。 ものづくりに携わるみなさんは、今の厳しい状況においても穏やかに美に向き合い、淡々と創作に打ち込んでいただきたいと思います。制作は心を落ち着かせてくれます。そしてそのものたちは人々を和ませてくれます。 このような時であるからこそ人々は民藝の美しさにより近づき、気付き、大切なものを得ることになると思います。 民藝は私たちを救ってくれます。 再びこの穏やかな空間で、みなさんとお会いできることを楽しみにしています。 公益財団法人日本民藝館 館長 深澤直人